名古屋地方裁判所 平成10年(レ)32号 判決 1999年4月26日
控訴人
関輝蔵
被控訴人
名城シッピング株式会社
ほか一名
主文
一 本訴請求についての原判決主文第一、三項を次のとおり変更する。
二 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して金九万〇六七三円及びこれに対する平成八年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 控訴人のその余の本訴請求を棄却する。
四 反訴請求についての本件控訴を棄却する。
五 本訴についての訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを四分し、その一を被控訴人らの負担とし、その余を控訴人の負担とし、反訴についての控訴費用は控訴人の負担とする。
六 この判決は、第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して原判決認容額のほかに金三一万九一三〇円及びこれに対する平成八年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人名城シッピング株式会社の請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
5 第2項につき仮執行宣言
二 被控訴人ら
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二事案の概要
本件は、控訴人が運転し所有する普通乗用自動車(控訴人車)と、被控訴人田邊欣也(以下「被控訴人田邊」という。)が運転し被控訴人名城シッピング株式会社(以下「被控訴人会社」という。)が所有する普通乗用自動車(披控訴人車)とが道路上で衝突した事故について、控訴人が、被控訴人田邊に対しては民法七〇九条に基づき、被控訴人田邊の使用者である被控訴人会社に対しては同法七一五条に基づき損害賠償を請求(本訴)し、他方、被控訴人会社が、控訴人に対し、同法七〇九条に基づき損害賠償を請求(反訴)した事件である。
一 争いのない事実
1 次のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
(一) 日時 平成八年五月二〇日午後一時三八分ころ
(二) 場所 名古屋市港区名港一丁目一番一七号先道路上(以下「本件事故現場」という。)
(三) 控訴人車 普通乗用自動車(岐阜五四ら九一二三)
右運転者 控訴人
右所有者 右同
(四) 被控訴人車 普通乗用自動車(名古屋七一て二二三九)
右運転者 被控訴人田邊
右所有者 被控訴人会社
(五) 態様 控訴人車が本件事故現場の南北に通じる道路(以下「本件道路」という。)の北進車線を走行中、本件事故現場の北方にある本件道路と交差する東西道路(主要地方道名古屋環状線、以下「本件東西道路」という。)との交差点(以下「本件交差点」という。)において左折しようとしたところ、控訴人車の左側部と、同車の後方からその西側を通過し、本件交差点を直進しようとした被控訴人車の右前横部とが衝突した。
2 被控訴人田邊は、被控訴人会社の従業員であり、本件事故当時、被控訴人会社の業務として被控訴人車を運転していた。
3 本件事故による控訴人車の修理代金は二六万八九一二円(内消費税分七八三二円)であり、被控訴人車の修理代金は二一万七八九六円(内消費税分六三四六円)である。
二 争点
1 本件事故の態様と双方運転者の過失の有無、程度
(一) 控訴人の主張
控訴人車は、本件道路の北進車線を通常の速度で走行中、本件交差点の約一〇メートル手前において多少左に転把したが、その際、控訴人車の西側を無理に追い越そうとした被控訴人車と衝突した。
本件道路の北進車線は一車線であり、二台の車両が並進することは通常行われず、また、控訴人は本件道路の状況を知悉していなかったのであるから、控訴人には控訴人車の西側から同車を追い越そうとして直進してくる後続車両を予見する義務はなく、他方、被控訴人田邊には、前方の控訴人車の動静に注意を払うことなく、控訴人車が本件交差点において右折するものと思い込み控訴人車をその西側から無理に追い越そうとした過失がある。
(二) 被控訴人らの主張
控訴人車は、本件道路の北進車線の中央線寄りの部分を走行していたが、本件交差点南側の横断歩道を越え交差点内に入った地点において、進路変更の合図をせずに突然急左折し、直進中の被控訴人車と衝突した。
本件道路の北進車線内において控訴人車と被控訴人車が並進することは十分可能であるから、控訴人は被控訴人車が控訴人車の西側を追い抜くことを予見しえた。控訴人には、左折するに際しあらかじめ左側に寄らず、その側方を確認しなかったこと及び進路変更の合図を行わなかったことについて過失があり、右各過失が本件事故の主たる原因である。
本件事故の過失割合は、控訴人側が九五パーセント、被控訴人側が五パーセントと認めるのが相当である。
2 控訴人及び被控訴人会社の損害額(代車料・弁護士費用)
(一) 控訴人の主張等
控訴人は、本件事故により前記修理代金のほかに代車料六万円、弁護士費用五万円の損害を被った。もっとも控訴人が現実に代車を使用した事実はないが、修理に通常必要な期間の相当性ある代車料は損害として発生した。
被控訴人会社の代車料、弁護士費用について不知。
(二) 被控訴人らの主張等
被控訴人会社は、本件事故により前記修理代金のほかに代車料八万円、弁護士費用一〇万円の損害を被った。
控訴人の代車料、弁護士費用について不知。
第三争点に対する判断
一 争点1(本件事故の態様と双方運転者の過失の有無、程度)について
1 前記争いのない事実並びに証拠(甲二、三、四の1ないし4、五ないし七、乙一ないし八、控訴人本人(当審)。ただし甲五、乙八、控訴人本人(当審)については後記採用しない部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(一) 本件道路は、片側各一車線の南北に通じる道路であり、対向する北進車線と南進車線の間には中央線が設置されている。
本件事故現場付近において、北進車線の車道はアスフアルトで舗装されており、その幅員は三・五メートルである。車道の西側にはコンクリートで舗装された路肩が設けられ、その更に西側には縁石のある歩道が設けられている。
本件事故現場の北方にある本件交差点は、信号機による交通整理が行われており、交差点出口にはそれぞれ横断歩道が設けられている。そして、本件交差点南側の横断歩道手前の北進車線上には一時停止線が設置されている。また、本件交差点の南西角には中善油業昭和シェル石油サンレックス港サービスステーション(以下「昭和シェル石油SS」という。)が所在し、昭和シェル石油SSは本件道路及び本件東西道路に面している。
本件道路の制限速度は時速四〇キロメートルである。
なお、本件事故当日の天候は、晴れであった。
(二) 控訴人は、本件事故当日、控訴人車(ニッサンステーションワゴン。車幅は一・六九メートル。)を運転して、名古屋市港区築地での空調設置の仕事を終え岐阜県多治見市の自宅に戻る途中道に迷い、名古屋港の方面に行ってしまった。
そのため、控訴人は一旦築地方面に戻ろうとして、本件道路の北進車線の中央線よりの部分を時速約四〇キロメートルの速度で走行しながら、交差する広い道路があれば左折しようと漠然と考えていた。
その後、控訴人は、前方に本件交差点を発見し、左折しようかどうか迷いながら本件交差点に近づくにつれ減速した。そして、控訴人は、本件交差点南側の横断歩道手前の昭和シェル石油SS入口付近に差しかかったが、その際、本件交差点において本件道路と交差する本件東西道路が道幅の広い道路であることを確認し、また、本件交差点の対面信号が青色表示であったことから、本件交差点で左折することに決め、更に徐行速度程度の低速度まで減速した。
(三) 被控訴人田邊は、被控訴人車(トヨタコロナセダン。車幅は一・六九メートル。)を運転して、名古屋市港区入船一丁目所在の被控訴人会社から船荷証券を荷主に届けるため、本件道路の北進車線を本件交差点の南方数百メートルの地点から前方の控訴人車の後方に付いて時速約四〇キロメートルの速度で走行し、本件事故現場付近に至った。
被控訴人田邊は、勤務先の被控訴人会社が本件道路の近辺にあることから本件道路を頻繁に利用しており、自己の経験上、本件道路の北進車線を走行する車両の半数以上が本件交差点において右折することを知っていた。そのため、被控訴人田邊は、控訴人車が本件道路の北進車線の中央線寄りの部分を走行し、かつ減速しているのを見て、控訴人車が本件交差点において右折するものと予測した。
そして、被控訴人田邊は、本件交差点に近づくにつれ控訴人車が前記のとおり減速したこともあり、時速約二〇キロメートル程度にまで減速したが、本件交差点の対面信号が青色表示であったことから、前方を減速走行中の控訴人車の左側を右速度で通過し、本件交差点を直進しようとした。
(四) ところが、控訴人は、被控訴人車が控訴人車の左側を後方から通過しようとした際、後方及び左側方の状況を確認せず、また進路変更の合図を行うことなく左折するため突然ハンドルをやや左に切り、控訴人車を北西の方向に進行させ、同車の車体を本件道路の北進車線の中央線寄りの部分から左側に寄せた。
これにより、控訴人車は控訴人車の左側を北方に直進しようとする被控訴人車の進路を塞ぐ形となり、本件交差点南側の横断歩道の北端から南に約七メートルの地点において控訴人車の左側面と被控訴人車の右前横部分が衝突した。そして、控訴人車の左側面の助手席後方のスライドドア及びその付近の部分に連続して被控訴人車の右前横部分が接触し、両車の右各部分に損傷が生じた。
本件事故の後、控訴人は本件交差点において左折し、昭和シェルSSの本件東西道路に面した側の道路脇に控訴人車を止め、被控訴人田邊は本件交差点南側の横断歩道手前の道路脇に被控訴人車を止めた。
以上のとおり認められる。
2 これに対し、被控訴人らは、本件事故は、控訴人車が本件交差点南側の横断歩道を越え交差点内に入った地点において、突然急左折したことにより発生したものである旨主張し、証拠(乙八(原審における被控訴人田邊欣也本人尋問の反訳書))中にはこれに沿う部分がある。
しかし、控訴人車が本件交差点内において急左折したのであれば、直進する被控訴人車は控訴人車の左側面に直角に近い角度で衝突するはずであるが、証拠(甲三、乙三)によって認められる控訴人車及び被控訴人車の損傷状況からは控訴人車と被控訴人車との進行方向が事故直前までほぼ平行であり、本件事故時に控訴人車が多少進路を左に変更する状態で衝突したことが推認されるから、控訴人車が本件交差点内に入ってから突然急左折したという被控訴人らの主張には疑問がある。
かえって、証拠(甲四の4)によると、控訴人は本件道路を北進し、本件交差点南側の横断歩道手前に至った時点において初めて本件道路と交差する本件東西道路が広い道であることを確認することが可能であったことが認められ、道に迷っていた控訴人が右地点において左折の意思を固めたことが推認されること、証拠(甲五、乙一)によると、控訴人が契約する保険会社側の担当者が本件事故後に作成した事故原因調査報告書(甲五)には、右担当者が平成八年九月二六日に控訴人と共に事故現場に行き事故の状況を確認した際、昭和シェル石油SSの従業員が本件事故は昭和シェルSSの本件道路北進車線に面した側の入口付近において発生したと述べたとの記載があること(もっとも、甲第五号証記載の本件道路の幅員は縮尺が存在しない上、各幅員間の比率も統一されていない不正確なものであるから、右記載の幅員をたやすく信用することはできない。)、また、被控訴人会社側の保険会社が依頼した株式会社損調の担当者が本件事故後に作成した「発生現場・事故状況(2)」と題する図面(乙一)にも、本件事故の発生現場として本件交差点南側の横断歩道手前の北進車線上の一時停止線手前で起きたとの図示があることが認められ、その他、前記認定のとおり本件事故直後の被控訴人車の停止位置が本件交差点南側の横断歩道手前の道路脇であることから本件事故現場もその付近であると推認されること等の事実も併せ考慮すると、前記認定のとおり本件事故は本件交差点手前で発生したものであること、また前記衝突角度からすると、その際、まだ控訴人車は急角度で左折する状態とはなっていなかったことが推認され、乙第八号証中前記認定に反する部分は採用できないというべきであり、他に被控訴人らの右主張を認めるに足りる証拠はない。
なお、当審における控訴人本人の供述中には、控訴人車は本件道路の北進車線を時速五〇キロメートルから六〇キロメートルの速度で走行し、本件交差点が近づいたので減速し、本件事故の直前は時速三〇キロメートルの速度で走行していたとの部分があるが、控訴人本人は右のような具体的速度について当審において初めて供述するものであるほか、前記認定のとおり控訴人は本件事故直前道に迷い左折場所を探していたこと、控訴人は本件交差点南側の横断歩道手前付近に至るまで本件交差点において左折することを決めかねていたこと等の事実に照らすと、控訴人車が本件交差点に近づくまで右のような高速度で本件道路を走行したとすることは不自然であるから、右供述部分を採用することはできない。かえって、前記認定のとおり被控訴人車が本件事故現場の南方数百メートルの地点から本件事故現場付近に至るまで控訴人車の後方に付いて時速約四〇キロメートルで走行し、直前で時速約二〇キロメートルに減速したことからすると、両車はほぼ同じ速度で進行し、また被控訴人車が右速度で控訴人車の側方を通過しようとしたことからすると、控訴人車は本件事故直前には徐行速度程度の低速度となっていたことが推認される。
そして、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
3 そこで、控訴人及び被控訴人田邊の各過失を検討するに、前記認定の事故態様によると、控訴人は、本件事故現場において、本件道路の北進車線の中央線寄りの部分を走行し、前方の本件交差点で左折しようとしたのであるから、あらかじめできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って徐行し(道路交通法三四条一項参照)、また、本件交差点の手前の側端から三〇メートル手前の地点において進路変更の合図を行う(道路交通法五三条一項、同条二項、同法施行令二一条参照)義務があるほか、自車の左側を通過しようとする後続車両がありうることを予測して後方及び左側方の安全を十分に確認する義務があったものというべきである。しかるに控訴人はこれらを怠り、本件交差点南側の横断歩道手前付近に至るまで漫然と本件道路の北進車線の中央線寄りの部分を進路変更の合図を行うことなく進行し、かつ後続車両がないものと軽信して後方及び左側方の安全を確認せずに、突然控訴人車のハンドルをやや左に切って、同車の車体を本件道路の北進車線の中央線寄りの部分から西側に寄せ、被控訴人車の進路を塞いだ過失がある。
これに対し、控訴人は、本件道路の北進車線は一車線であり、二台の車両が並進することは通常行われず、また、控訴人は本件道路の状況を知悉していなかったのであるから、控訴人には控訴人車の左側から同車を追い越そうとして直進してくる後続車両を予見する義務はない旨主張する。なるほど、本件道路の北進車線の車道部分の幅員は三・五メートルであるのに対し、前記認定のとおり控訴人車及び被控訴人車の車幅は共に一・六九メートルであるから、北進車線の車道部分の幅員は二台の車両が並進するのに十分であるということはできない。しかし、北進車線の西側には路肩が設けられていたのであるから現実には右路肩を通行することが可能であり、証拠(乙二、八)によると本件交差点手前においては右折車が北進車線の中央線寄りの部分を走行する場合には右のような並進状況となることが多いことが認められる。そうすると、本件道路の状況を事前に知悉していたとはいえない控訴人においても、現に進行中の本件道路の路肩を含んだ幅員及び控訴人車の車幅からすると後続する被控訴人車等が控訴人車の左側を通過する可能性を予見しえたというべきであるから、右控訴人の主張は失当である。
他方、前記認定の事実によると、被控訴人田邊についても、本件道路の北進車線が本件事故現場においては一車線であり、その幅員は路肩を含んだ場合には二台の乗用車が並進することは可能であるものの、余裕を持って並進するには到底足りず、前方の控訴人車が北進車線の中央線寄りの部分を進行していなければ控訴人車の左側を通過することができないような状況にあったこと、また、控訴人車は右折の進路変更の合図をしておらず本件交差点において右折することを明示していないのであるから、前方の控訴人車の左側を通過しようとする際には、減速していたとはいえ控訴人車が右折するものと即断することなく、その動静に十分注意してできる限り安全な速度と方法で進行しなければならなかったこと、しかるに被控訴人田邊はこれを怠ったことが認められ、本件事故発生につき過失があったというべきである。
なお控訴人は、被控訴人田邊が左側から追い越した旨を主張する。しかし、左側からの追い越しも所定の場合には許されているのみならず、追い越しというためには、従前の進路を大部分変える程度の進路変更があることを要し、これに至らない程度のものはいわゆる追い抜きであって追い越しには当たらないと解されるところ、本件にあって右程度までの進路変更があったとまでは直ちにこれを認めるに足りる証拠はなく、右追い抜きに当たるものと認められる(なお、証拠(甲五)によると控訴人の契約する保険会社側の担当者も追い抜き事故とみていたことが認められる。)。
そして、道路幅員、双方車両の進行状況、進路変更の合図の有無などから認められる右認定の双方の過失の態様に照らせば、本件事故発生について控訴人の過失割合は七割、被控訴人田邊の過失割合は三割であり、双方の後記損害額につき右割合の過失相殺をするのが相当である。
二 争点2(控訴人及び被控訴人会社の損害額(代車料・弁護士費用))について
1 控訴人の損害額
(一) 代車料
控訴人は修理に通常必要な期間の相当性ある代車料は損害として発生している旨主張する。しかしその主張によると現実に代車を使用した事実はないところ、現実に代車を使用しない場合には代車料は認められないと解するのが相当であって、控訴人の主張は失当である。
したがって、控訴人の損害額は控訴人車の修理代金相当額二六万八九一二円となり、前記過失割合に従い、右金額から七割を過失相殺すると、被控訴人らが賠償すべき控訴人の損害額は八万〇六七三円となる。
(二) 弁護士費用
本件事案の内容、認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある控訴人の弁護士費用相当の損害額は一万円と認めるのが相当である。
2 被控訴人会社の損害額
(一) 代車料
乙第八号証及び弁論の全趣旨によると、被控訴人会社は代車を少なくとも六日間使用し、一日当たりの代車料は八〇〇〇円であったことが認められるから、被控訴人車の代車料相当額は四万八〇〇〇円となる。
したがって、被控訴人会社の損害額は被控訴人車の修理代金相当額(二一万七八九六円)と代車料相当額の合計二六万五八九六円となり、前記過失割合に従い、右金額から三割を過失相殺すると、控訴人が賠償すべき被控訴人会社の損害額は一八万六一二七円となる。
(二) 弁護士費用
本件事案の内容、認容額等を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある被控訴人会社の弁護士費用相当の損害額は二万円と認めるのが相当である。
第四結論
以上によれば、控訴人の本訴請求は、被控訴人らに対し、連帯して損害金九万〇六七三円及びこれに対する本件事故日である平成八年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。他方、被控訴人会社の反訴請求は、控訴人に対し、損害金二〇万六一二七円及びこれに対する本件事故日である平成八年五月二〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。原判決は右と一致する限度で相当であるが、異なる部分は失当である。しかし、本件においては控訴人のみが控訴しており、原判決を控訴人の不利益に変更することは許されない。
よって、本訴請求についての原判決を右のとおり変更し、反訴請求についての本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 北澤章功 堀内照美 中辻雄一朗)